おぐらやま農場は、無肥料栽培に取り組んでいます。
広大な北アルプス山域に降り注ぐ雨や雪は、
森の中のせせらぎに集まり、川になります。
そして大地に染み込み岩石に触れながら、
長い時間をかけて地下深く潜り込み、
やがて湧水として地上に湧き出します。
北アルプス山麓に広がる安曇野は全国にも知られる名水の里です。
その清流と湧水を子々孫々まで護っていくために、
安曇野地域で一番問題になっているのが、
農地に使われる窒素肥料です。
肥料を施すことで農産物が生長しよい収穫が得られるというのは、
長い間当たり前になっている農業現場の常識なのですが、
そのことが自然環境に大きな影響を及ぼしています。
安曇野市は地下水を汲み上げて水道水源としている
井戸数十か所の「硝酸態窒素濃度」を毎月測定しているのですが、
場所によっては年々濃度が上がり、
水質基準値近くまでになっている地区も出始めていると聞きます。
この地で新規就農して数年後にその現状を知った時、
農業が環境破壊をしないためにどうすればよいのか、
考えざるを得ませんでした。
農薬使用は慣行栽培の20%以下を基準とし、窒素肥料・除草剤は一切使用いたしません。
果樹栽培の中でも、「りんご」は品種改良が進み、
野生種から遺伝的に遠く離れていること、
もともとコーカサス北部の乾燥地帯が原産地のものを
夏場に高温多湿となる日本で栽培することなどの理由で、
殺虫殺菌のために多くの農薬が使われています。
ここ数十年で農薬研究も進み、強力な毒性・残留性を持つ農薬は、
国に許認可されなくなり、ほとんど姿を消して行きましたが、
今でも使われているネオニコチノイド剤が、
ハチの大量死につながるといった説や、
除草剤として広く使われているグリホサート剤に、
発がん性があるかないかといった議論は現在も続いています。
(ネオニコ殺虫剤・グリホサート除草剤はおぐらやま農場では使っていません。)
「農薬」の定義は幅広くあり、
一概に「農薬は悪」と一言で片づけてしまう訳にもいきません。
有機JAS認証のある農薬は人体に安全なものを原料にしたものが、
近年多く研究され、実用できる価格のものも出てきています。
また窒素肥料をやめていくと、
驚くほど農薬のお世話にならなくとも病虫害被害が
軽減されることが分かってきています。
おぐらやま農場では、まず無肥料で栽培する農産物を目指して十数年、
試行錯誤を続けながら現在の化学農薬使用量は、
慣行栽培の20パーセント以下、1割台になっています。
農薬成分は日光や微生物などによって早いものは1日以内、
長くても数週間で分解されていきますので、
健康体の人が農薬使用の農産物を食べることで、
大きく健康ダメージを損なうことは考えにくいでしょう。
(化学物質過敏症状などの例外も存在しますし、
分解される前の薬液散布をする現場労働者への影響が一番大きいでしょう)
無肥料栽培がなぜ必要なのか
しかし、窒素肥料栽培には明らかに影響を及ぼす項目が多く、
<自然環境へのダメージとして>
*地下水汚染の主原因。
*亜酸化窒素発生による大気温暖化、オゾン層破壊。
<人体への影響として>
*硝酸態窒素は体内で発がん物質であるニトロソアミンに変化する。
*血中で酸素運搬を担うヘモグロビン(赤血球)がメトヘモグロビンに変化し酸素運搬能力を失う
<農作物への影響として>
*植物ホルモンのアンバランス。
ジベレリンが活性化し作物が旺盛に生長、
反対に病虫害耐性のエチレン、
糖度を上げるアブシジン酸が低下することで、
農薬依存と食味低下を引き起こす。
窒素分が苦味・渋みの原因なので、食味が悪い。
*硝酸態窒素は植物内でアンモニアに変化し、
それを餌にする虫の食害を受ける。
*窒素濃度が上がると植物体の中で、
相対的に細胞の骨格となるCa欠乏状態となり、
細胞壊死を起こす。
*細菌やウイルスの侵入を容易に許し、
様々な病気を発生させる。
*細胞壊死の起こっている農産物は保存性が悪く、
長期保管できない。
冷蔵庫へ入れても野菜などがトロけてしまう症状。
<農地への影響として>
*長年散布され続けた肥料分は、
地下40センチ当たりで蓄積し、
水も空気も通さない「硬盤層」を形成。
長雨時は根が水没し、
日照り時は土中深部からの水分移動ができないために水分不足。
環境変化の影響を受けやすい農地となる。
上記のように様々な問題を引き起こす可能性があり、
まず第一に「無肥料栽培」をどうやって実現していくかという
課題に取り組むことが最優先と位置付けて、農場の営農指針としています。
栽培技術の向上進歩の中で、
だんだんと農薬のお世話にならずとも
皆さんに喜んでもらえる農産物をお届けできるように、
学究につとめる毎日でありたいと思います。
私たちの農産物はほぼ100パーセントが産地直送の直接販売です
大量生産・大量流通・大量消費の時代の流れを逆行しているかも知れませんが、
農産物の内容に価値を生み出し、
それを理解してくださる方に一箱一箱、
農場直送でお届けしていきたいと思います。
食味や栽培過程にこれまでのものと一線を画す自負もありますが、
価格帯はここでがんばります。農場を始めたときから目指してきた形が、
中間バイヤーを通さずお客様にダイレクトに届ける、
評価も直に受け止められるこの形です。
お客様から直接いただく声は、
自分たちの課題や喜びに直結できる形でもあります。
ここまで多くの方に応援いただけたことに感謝しています。
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